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2011(Tue) 23:51

他人の煽て方

小説

昨日は久々にサマーウォーズのサイトから感想をいただけました。
あまりに嬉しい感想に、ひっさびさに火が付きましたw

>web拍手れす
>18日22:11 の方
嵌るのに時期なんて関係ないですよっ!
どちらから来られたかは存じませんが、ようこそお越しくださいました!
最終更新日……あれ?一応去年も書いているんですけど…「共振」っていう短編。
ブログは本家と一緒に併用というか、今はこちらしか更新していない状態ですね。すみません。
アニメ感想ブログになっちゃいますが、たまにちょこちょこといろんなところを更新しています。
ほかも気に入られた良いなぁとか、思うのですが…(; ・`д・´)…ゴクリ…(`・д´・ ;)


ということで、焚き付けられたので書いてみた。





“Classic”

 黒板にカリカリと速記で書いていく数字が魔法の呪文に見えた。
 茫洋とした視線、ここではない『どこか』『何か』を見て考えている視線。
 0と1から9の数字を使って繰り広げる彼の世界を垣間見えるのは、隣で皮肉気に笑っている彼のメガネをしている親友だけだろう。
 それでもその一端しか解らないに違いない。
 彼が見ている景色は、少年――青年になりかけの揺らぎの中にいる数学馬鹿――の見ている景色に似ているようで、違う。少年が踏みしめる土台を作り上げるか、または得た答えから更なる景色を作り出す手腕を見据えているのだ。
 何のきっかけでその高速記述を垣間見たかは忘れたが、その少年の冷徹な視線だけはよく覚えていた。
 彼を知っている先輩に聞くと、「前から凄かったけど、去年の一件があってからさらに凄味が増した」とのことだ。
 
 ――二度目は、無い。

 背中から感じた意気込みは、そう見て取れた。
 そして、それだけ真剣だったので、次の瞬間不意を突かれた。
 風がざぁっと教室の中を駆け抜け、奇妙な熱気に籠った教室の空気を換えたかと思うと、さわやかな声が響く。
「なーに?まだ終わらないの?」
 制服の群れの中で、すっと立つ、白と青のマリンスタイルのワンピースを着た女性は目立った。
 かりっという音は、チョークの欠けた音だろう。
 数字の羅列を書き終えた少年は、振り向く。そして、女性を見て溶けるような笑みを浮かべた。
「いいえ、あとは佐久間に任せるだけです」
 私に微笑みかけたわけじゃないのが、なぜだかすごく悔しくなった。
 そして、その笑みを浮かべさせられるのも自分でないことが、無性に切なくなった。

 隣にいる友人に聞いてみた。
 あれは、誰なのか、と。
 彼女はきっちり間違えることなく、「小磯健二先輩とその『恋人』の、卒業生の篠原夏希先輩よ」と答えた。
 小磯先輩の隣にいたメガネの「佐久間」先輩が、ちらりとこちらを見て、「あ~あ」という顔をしたのには気づかなかった。

 どうやら私は、世間一般的にいう、「ひとめぼれ」をしていたらしい。

 らしい――という伝聞なのは、私が最後まで認めなかったからだ。残念なことに。

* * *

「はぁぁ!?あんた、ウチの学校にいる(た)三大傑物を知らないのおぉ!?」
 仰々しい単語を言った友人に、容赦なく「あん(うん)」と口にものを入れたまま答えると、友人である彼女はゆっさゆっさと私を揺らしながら、さらに続ける。揺れる視界が、気持ち悪いです。
「あんた、いくらうちらが今年入った一年生だからって、それはないよっ!世間一般の常識よ?!周辺校集めての美女と名高い篠原先輩も知らないの?あんた、もぐりよ!もぐり過ぎてもう一度高校受験からやり直しなさい~~!」
 そんな三大傑物とやらの問題まで出るかよ――などという疑問は言わせてくれるわけも無く、「えへー」と笑っておく。
「佐久間先輩は、『ラブマシーン襲撃事件』の解決を担った優秀なプログラマーよ。篠原先輩がラブマシーンを倒したアバタ―の持ち主っていうのは……今知ったのね。分かった。もう話を区切るな。で、どこまで言ったっけ?あ、そうそう最後の花札ステージを作り上げたのも佐久間先輩よ。もちろんほかにも協力者がいたんでしょうけど、主任設計士っていうんだっけ?そんなことしていたらしいのよ。え、なんでそんなこと知っているって……あんた、OZで何を見て来たのよ、この一年ーーー!」
 肝心な小磯先輩の件を聞く前に、友人を怒らせてしまった。
 慌てて私は続きを彼女に促した。
「で、小磯先輩は、(仮)ケンジのマスターよ。最初にその優秀な頭脳のせいでOZを混乱に陥れたラブマシーンに目をつけられ、そして最後にキング・カズマを引っ張り出して、崩壊の引導を渡すコードを導き出した『今年』の数学オリンピックチャンピオン」
 つらつらと私の知らない情報を紡ぎだす友人に、思わず言ってしまった。
「由比ちゃんよくそこまで知っているねー」
 ぽへーっと口にした私に、由比は「はぁぁぁぁぁ」と深い、海溝並みの深さの溜息をついて、私をぎゅううっと抱きしめた。
「悪いことは言わないよ、晶ちゃん。小磯先輩は無理よ。あの人は一級品。自分で原石を削り出して、磨いて、輝かせて、ウチのマドンナを射止めたんだから」
 由比は晶の思い人を、佐久間先輩でなく、すぐに小磯健二であると断定した。
「――……なんで?」
 ちょっと泣きそうな顔で言ったかもしれない。顔をへちょっと挟み込んで、額と額を合わせる。
「隣にいて、分からいでか」
「――…………違うもん」
 往生際悪い晶の答えに、由比は怒るでもなく、優しく肩をすくめると、もう一度ギュッと抱きしめた。

* * *

「おー、おー。この小悪魔少年が」
 後ろ体重で椅子に腰かけながら、牛乳パックをちゅーちゅーと啜りながら佐久間は隣で絶賛バイト中の親友をからかう。
「なにが?」
 カタカタとキーボードを叩く指の進みに迷いはない。
 あの事件を解決した後もOZの末端構成作業員としてバイトしている健二は、絶賛サボり中の親友にきょとんした声音で聞き返す。
 今では、健二と佐久間の二人のパソコンを使う専用の教室となってしまった物理部の部室から、中庭を見る。
 二人の少女が百合っぽい風景を演じているかに見えるが、この春に部長になった後輩から、健二が数学オリンピックで優勝した腕前をみんなの前で見せて欲しいといって、強引に大教室へと引っ張られ、健二が黒板を使って演算の演習をした時に、ミーハー女子や男子の中に混じっていた一年生の女子二人だろうと見当つけていた。
「夏希さんという女性≪ひと≫がありながら、このこの、隅に置けませんねぇ。旦那っ!」
 にやりと笑いながらいうと、そこでようやく健二が振り返った。
「はあぁ?何を言ってるんだよ。よくわからないやつだなぁ」
 鈍いのはこいつの特性か、それとも意図的か?
 ――最近、上司≪理一さん≫に似てきて、はぐらかすの上手くなったからなぁ、こいつ。
 自分を棚に上げ、腹黒い健二を想像した佐久間は、「まーまーいいですけどねー」と、牛乳パックの中身を飲み干して、作業に戻る。
 彼も立派なOZの構成担当者だ。しかも、こと「構築」に関しては、健二よりも権限がある。
 一年前の大立ち回りの斬新な結果を、理一さんとこのバイトと同様に責任も負わされて権限を与えられてしまったのである。
 面倒くさい。大いに迷惑だ。だが――それでも面白いと、佐久間はこの状態を認識していた。
 隣で作業をやり始めた友人の先ほどの言葉が気になりつつ、健二もまた作業に集中していった。

 だから、気づかない。
 親友である佐久間が、そっと自分を窺っていたことに。

 この一年で、拳一つ分成長した健二は、今では夏希先輩を超えている。
 ヒールを履かれると、せっかく越した身長がまた一緒になっちゃうんだ――と笑ってはにかむ健二だが、その夏希先輩が、そのことに気づいてからヒールの低い靴を選んでいることに気づいているだろうか?
 いや、親友としては、さらに牛乳を飲み、運動をして身長を伸ばそうとしている健二の努力が報われることをひっそりと祈ってやるのが正しいだろうと、彼ら二人の初々しいやり取りを観察していのだ。
 子供らしさが残っていた顔は、去年の大事件と先輩と付き合うようになってからの責任感、そして――ちょっと危ないバイトのせいで凛々しさを増し、他の高校三年生とは違う雰囲気を持つようになったと、佐久間は思っていた。
 
 ――あ~あ。こりゃぁ、本気になる女の子はこれからも結構増えるぞー。

 自分を見つめているいくつかの視線をスルーしていることに気づかない佐久間は、親友への視線だけは敏感に悟っていた。いくつかのフラグを自分でへし折っている事実に気づくのはまだ先のことであり、彼の恋の話はまだ当分先の話であろうことは、間違いない。

「お前は“Classic”だな」

 呟いた佐久間の声は、カタカタとキーを叩く音にかき消され、聞こえない。

 原石を削り出し、磨き上げた少年は、好きな女性すら眩しく見つめる光り輝く宝石となった。
 ――俺も、Classic《超一級品》になりたいねぇ。
 心中の独白は、誰にも聞こえない。

 だが、少年も、また知らないのだ。
 宝石の隣であって、腐ることなく、色あせず、また輝ける存在も、Classic《超一級品》であるということに。

《and that's all...?》

This fanfiction is written by Ryoku.




という感じに書き上げてみました
うちの佐久間と健二は、防衛大学校に進むんですが、高校三年生なのにそんなにカツカツして受験勉強していません。いや、まだこの時期だからかな?
まぁ、究極の家庭教師を持っているからっていうのもあるんですけどね。
ネタは、まだありますので、気長にお待ちください。
偶にふると、ページ化しないでブログで書き連ねることがありますが、そのへんはご勘弁を。

だってページ化するのが面倒臭い

感想お待ちしています!

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